ふく姐さんの紹介
預かった貸家に看板をつけたあと、近くの不動産事務所へよって斡旋をお願いしてきた。
訪問先のふく姐さんは、仲介した東山区の物件がきっかけで仲良しに。
ぼくが時計をみると、何か話題をさがす。
帰るそぶりをみせるとすかさず
「パン食べる?」
「珈琲いれようか?」
「2階で寝ていったら?」
いろいろなバージョンで引きとめてくる。
ひとりの会社では話相手も欲しくなるか。
ふく姐さんは勉強熱心なところがあって、去年は不動産コンサルタント。
今年はマンション管理士をうけるらしい。
先日アポなしで事務所へいくと、カウンターで教科書を開いて居眠りをしていた。
「・・・勉強してたんですか?」
「・・・びっくりした。そうなの。」
「嘘つき。勉強してたんじゃなくて寝てたんでしょ。」
「・・・もう、そんなん言わんといてぇ。」
「2分前から見てましたよ。」
「・・・もう、そんなん言わんといてぇ。」
かわいく語尾をのばせば許されると思っている節がある。
姐さん昔はチチをぶるんぶるんさせながら数多の取引をこなし、京都中の不動産屋男性を虜にしていたという。
今の年齢をきくと、レディにそんなことを聞くなといって教えてくれない。
あんたのおかあさんくらいじゃない?
というから母の年をいったら、黙り込んだ。
自分から年齢をしぼられるような発言はしなければいいのに。
一方で、ふく姐さんは自分を京都でもっとも年齢の高い現役女性不動屋だといい、宅建士の番号が3桁しかないことを自慢してくる。
若くみられたいのか敬老してほしいのかよくわからない。
きいてもないのにハンサムだといってくれるが、褒めてどうしたいのか。
返し褒めすると手で顔を覆い、会うと僕を満腹にしようとし、いつまでも生娘のような、どこまでも母のような人である。
そんなふく姐さんとご縁をもらった八坂庚申堂の隣の店舗も、あしたお客様に引渡しして終了。
きっと明日も、帰ろうとすると寂しがると思うけど。
また近いうち取引しましょうね。