とっさにでる言葉
家主と打ち合わせ終わりの午後5時頃。
知人からめずらしく電話があった。
「五条川端近くを運転していたら、オカマをほられた。」
「僕もちょうど五条川端にいますよ。追突されたんですか?」
「3時間前のことやけどな。」
イヤホンの音量をあげる。
「あたってきた車は配送用車両みたいな軽バン。運転手に事情をきいてんけどさ。」
運転手の弁明
「赤から青信号にかわって、車両が動きだしたと思いブレーキを離して発進後・・」
女性つづけて謝りながら
「・・わき見をしてしまいました。それで、(前で停止した知人の)お車にぶつかってしまいました。」
軽いゴンくらいの音はしただろう。
衝撃もあったに違いない。
「怪我はなかったんですか?」
「スピードもでてないから、幸いどっちも怪我もなかったんやけどさ。
警察は呼んでちゃんとしようと思ってね。
最初は怒りたい気持ちもあったけど、母親くらいの年齢の女性がぺこぺこ頭を下げるのを見てるとどうもね。」
あの煩わしい事故処理は経験がある。
「それは災難でしたね。しかし、その程度で済んでよかったですね。」
「女性の職場の社員らしき人も現場にきてね。」
上司の人なのか。
近くに会社があるのだろう。
「連絡先交換も終わって仕事に戻ろうと思ってな。
そしたら途中から一緒にいた男性社員が最後に頭さげて
『ありがとうございました!』
っていうてん。
いや、それありがとうございましたってどういうことやねんと思って。」
あの温厚な男がおこっている。
「現場はなれてから沸々と・・
やっぱオカマ掘った相手にありがとうございましたはおかしいやろ!」
昔テレビで見たキム兄のようである。
「おばちゃんは百歩譲ってええとしても、腹たってきてさぁ。
迷惑かけておいてありがとうございましたって・・」
とっさにでる言葉はおそろしい。
「あ~首いたなってきた気するわ・・」
「明日、いたくならないといいですね。」
上司はいたほうがよかったのか。
いない方がよかったのか。
せめて次から気をつけようねっていってあげたい。