フリーレントは必要?内装工事期間の賃料【京都 商業用不動産】

内装工事期間の賃料はどのように考えるべきか

「家賃発生日についてどうすべきか」とご相談を受けることが多いので今回は店舗における内装工事期間の賃料について検討中の大家様向け「内装工事期間の賃料の扱いについて」の記事です。所有している店舗を貸すことが決まれば、テナントと賃貸借契約を締結する際に家賃の発生日を取り決めますが、テナントさんは店舗出店の際には、そのまま改装せずにオープンするということはほぼありません。開業・開店までには内装工事期間が発生するものです。


そこで。



家賃発生日についてどうすべきか





と、考える店舗物件の賃貸大家様も多くいらっしゃるでしょう。内装工事期間の賃料を無料にすべきかどうかをわかりやすくまとめてみました。


内装工事期間の賃料は発生するもの?しないもの?

まずはじめに、契約は当事者同士で自由に取り決めが可能です。ですので、家賃発生日についても自由に取り決めることができます。内装工事期間の賃料を無料にするのが一般的かどうかということについてですが、テナント側の事情でいうとテナントはオープンして、やっと売り上げが発生しますから工事期間中はは売上ゼロです。 オープン日=賃料発生日が借主の希望であることは間違いないでしょう。賃料を免除する場合、これを「賃料免除期間」「賃料無料期間」、あるいは「フリーレント期間」などといいます。

フリーレント期間・・なんか聞いたことあるでしょ。

契約開始日以降は、鍵を渡して借主さんに賃借権が生じます。結論を申しますと、契約開始日に賃料発生が原則ですから、フリーレント期間なしでも問題ありません。フリーレント期間というのは大家さんの好意であったり、テナントを誘致したいという姿勢からでるものです。大家さんがテナントさんに協力してあげたいと思えたらやってあげれば良いし、そこまでしたいと思わないなら、つけなくても別に良いのです。しかし、この記事を読みに来て頂いている方はある程度理解をしたら前向きに検討したいという大家さんかと思います。そこで前向きに検討している大家さんのために、ここから先はフリーレント期間を設けるにあたり理解を深める内容でお送りします。フリーレントはテナントさんの出店を直接応援してあげることになりますので大変喜ばれます。

フリーレント期間の目安

物件の広さや状態によって変わりますが、大体工事期間でいうと1ヶ月~2ヶ月です。内装工事期間中をフリーレントとしたい場合、1・2ヶ月を基準で検討すると良いかと思います。必ずしも工事期間と連動しなくてよいので、例えば、1ヶ月間のフリーレント、2ヶ月間のフリーレントといったように期間で切って交渉してもよいでしょう。但し、立地が特殊な場合や京町屋のように古い建物である場合、解体なども慎重に行わなければなりません。その場合はすっと工事に入ることができませんので、総工費などもそうですが総合的にご判断頂くのが良いでしょう。例えばオフィスだと解約6ヶ月前予告が多いのですが、即入居可のオフィスを検討する場合、移転時には二重家賃の問題が生じます。そのため3ヶ月~4ヶ月のフリーレントをつけて二重家賃の解消をはかり入居促進することも珍しくありません。通常店舗の内装工事はおおよそ1ヶ月~2ヶ月程度なので、仮にフリーレントを設定するなら1ヶ月~2ヶ月が一般的です。

賃料無料期間を設ける大家さんのメリット

冒頭で申し上げた通り、フリーレントは直接大家さんがテナントを応援できることであり大変喜ばれます。しかし、なぜこちらが負担をしなければいけないのか・・損している気がする・・と思っていませんか?実は以下のようなメリットがあります。

①突貫工事を防ぐ=資産を守る

後述しますが、売り上げがでないうちの賃料発生はテナントにとってかなりの負担。家賃が月額100万円なら、1日何もしていなくても3万強出費を強いられます。3日で10万円もかかるためテナントは家賃発生している以上内装工事期間を1日でも早く急ぎでやるように工務店に指示することになります。焦りから大家さんへの工事内容の申請が抜けたまま勝手に工事が進んでいるということも残念ながら珍しくありません。信頼している工務店ではなく、とにかくスケジュールのあいている業者へ依頼したりという行動に繋がってしまいます。結果、トラブルになったり大切な資産に突貫工事をされると無用な傷みを招く原因に。例えば古い京町屋を改装する場合などは丁寧に解体なども進めないと、最悪倒壊の恐れすらありますから怖い話です。
京都は特に厳しく行政によって景観指定されているところが多かったり、近隣住民への調整が必要な地域では大家さんと近隣のトラブルにも発展しかねません
町づくり協議会としっかり意見交換が求められるエリアもありますから、密な手続きをしっかりやってもらわないとそれこそ安心できませんよね。

②しっかりとした店舗造りをしてもらえる

例えば、店舗をしっかりと作りこむにはこだわりをもってデザイナーさんの意見を取り入れたいというテナントも多いです。また大家さんへの工事申請手続きもしっかりやって頂くことで大家さん自身も安心でしょう。メニューや単価は途中変更がきいても立地と内装はおいそれと替えることができません。だからこそ、できるだけ100%に近いものを完成しオープンしたいとこだわっています。これらは大家さんの店舗で繁盛するためにやっていることであり、大家さんにとってもそこで繁盛してもらうことが長期的な入居継続要因になります。適当な内装や雑な工事でオープンされると、嫌ですよね?店舗に来店するお客様も、やはり良いお店にいきたいですしこだわってやって頂くことは良いことです。

③浮いた賃料分は、事業投資にまわすことができる

キャッシュフローが良くなることで内装グレードをあげたり広告費にまわしたり、売上をつくる要素に投資活用することができます。上記と同様ですが、繁盛を応援することが長期的な家賃収入を期待することができます。経営はテナントの責任ですので大家さんができることというのは多くありませんが、フリーレント期間を設けることは事業を直接応援することができ、大家さんだけができる直接的な応援ともいえます。


賃料無料期間をつける場合の注意点3つ

1.賃料無料期間を設ける場合は期日をしっかりと決めること

内装工事期間中に賃料無料期間を作ってあげたいという場合はどうすれば良いか。特約条項などでしっかりと「賃料発生日」を決めるように致しましょう。
「家賃はオープン日からでいいよ~」と返事してしまうのはおすすめしません。テナントがただ甘えて、意図していない期間になったりするので要注意です。
テナントの怠慢や落度でオープンが1年後になったというようなこともあるので、以下のような記載を特約に付すことが望ましいでしょう。

例)
〇 契約開始日は2020年2月13日とし、賃料発生日は2020年3月13日とする。
〇 契約開始日は2020年2月13日とし、賃料発生日は当該店舗の営業開始日、あるいは2020年4月13日のいずれか到来が早い日を起算日とする。

× 賃料発生日は当該店舗の営業開始日を起算日とする
× 内装工事期間中の賃料は免除する

2.その他固定費や実費がある場合は取り決めをしっかりする

店舗でも共益費や、水道基本代、固定費などがある場合は、それも免除対象なのか記載を盛り込みましょう。通常フリーレントといえば賃料のみを対象にすることが多いですが、他月額が全くかからないという理解違いが起きたりもします。それらもフリーレント対象にするのなら良いですが、そうでない場合は双方で認識が一致するように気をつけましょう。特にテナントビルや集合テナント物件の場合はご注意を。

例)
〇 契約開始日は2020年2月13日とし、賃料発生日は同年4月1日とする。但し、賃料以外の項目(共益費・水道代・電気代等)については契約開始日より発生するものとする。


3.長期フリーレントを付す場合は店舗業者に意見を聞く

例えば諸事情がある中、大家さんのご好意で4ヶ月のフリーレント期間を設定して、契約開始し1年で退店ということになった場合、4ヶ月分の賃料を大家さんが負担しているわけで8ヶ月程度しか実入りが無かったという事態になります。「その心配してんねん」という声が聞こえてきそうです。ボランティアではありませんし、期待は長期安定家賃収入だったはずですから「残念!」の一言ではさみしいですね。バランスをとった特約を付し公平性をはかるのも交渉のひとつです。

例えば下記のような特約を検討してみても良いと思います

例)
〇 短期解約違約金として、借主は2年未満の解約の場合は賃料2ヶ月分、1年未満の解約は賃料4ヶ月分を貸主に支払うこととする

期間の提案であったりこれらの提案はその他一時金の有無や物件の状態など総合的に勘案していくものです。店舗取引の経験が多い業者でないと、少し難しいかもしれません。実務では管理会社が交渉しとりまとめる内容です。そのため、管理会社や仲介会社はできるだけ店舗取引の経験豊富な業者に頼みましょう。

こういった交渉や提案は、当社が募集窓口であったり管理会社として受託している場合は大家さんに代わってテナント様へ交渉致します。

テナントの都合を考えてみる

貸主からしても物件はできるだけ良い人に貸したいと思いますので、相手の都合も加味した契約交渉をおすすめします。そこで、テナントさんの都合とはどのようなものがあるか考えてみましょう。

①人材確保
②広告宣伝
③内装工事

①人材確保

人不足というのは大変な問題になっていて、新聞やニュースなどで見聞きされていることもあるでしょうか
実際に閉店や縮小をされるにあたって、理由をきくとスタッフが採用できないという話をよく聞きます
新店をあけるためには店長配置とスタッフの確保、スタッフの教育が必要ですからその期間を十分にもたなければなりません
本来はスタッフを準備してから新店を計画するのが一番ですが、その間人権費が大きくのしかかります
物件がすぐみつかるものでもなく大半のケースで店長候補の確保まではしておいて、物件が決まったあと大急ぎで求人を行っています

②宣伝広告

お店はただ開けてもお客様が来ないため、周知や広告についての打ち合わせ、広告費の投資がいります
チラシをまいたり、新聞掲載、広告掲載についての打ち合わせなどなど

③内装工事

工事業者もどこでもいいというわけではないので、工事業者のスケジュール確保もそうです
設計からの打ち合わせやデザイナーなどが入ると長期間に及ぶこともあります
この他、大家さんに対しての工事内容申請や近隣調整なども対応することになります

まとめ

物件がでるのはタイミングのため、やりたいが急には準備が追い付くものでもありません。出店時のコストも相当なものです。
1店舗オープンさせるのは計画も事前準備も用意がとても重要になってきます。たとえ1ヶ月分でもフリーレント期間があると、費用のみならず精神的にも随分と違うものです。物件が店舗へ転用するための工事費が高額であったり、古い町屋のような特殊物件、工事が簡単に進められない場所、行政や町内会との打ち合わせを伴うような環境の場合は積極的にフリーレントを利用することもご検討頂くと良いかもしれません。

最後までお読み頂き有難うございました。